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読み解き 脱炭素 2026年9月7日(月) 6:00

電化を進める資料に、ガス火力が並ぶ

パワーGX取りまとめ。調達で守るのは原油とナフサだった

約7分 ガスみらい通信 編集

中東情勢を受けた政府のエネルギー対策が、8月26日にまとまりました。原油の話だと思って開くと、途中からデータセンターとガス火力の話になります。都市ガス事業者にとっては、自分の商売がどの欄に書かれたかを確かめる資料です。

① いま、何が起きているのか

2026年8月26日、第17回GX実行会議が開かれ、「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ」(パワーGX、POWERR GX)が取りまとめられました。議題は二つ。中東情勢の影響を受ける重要物資の供給状況と、エネルギー需給構造の強靱化に向けた日本のGXの加速です。

掲げられた「二つの強靱化」は、①化石燃料の調達安定性の抜本的な向上、②GXの加速・強化。これに③として、アジアをはじめとしたグローバルなエネルギー需給構造の強靱化が加わり、4本目の柱が「POWERR Asiaを通じたエネルギー強靱化」に充てられています。

前提として置かれた数字が、資料の性格をよく表しています。原油輸入の中東依存度は2024年度で95.9%。第一次石油危機前の1972年度が80.7%、東日本大震災後の2013年度が83.6%ですから、近年のほうが高い。一方でエネルギー供給における石油依存度は74.1%から34.5%へ、原油輸入量は2.47億klから1.36億klへ下がっています。全体としては減らしてきたけれど、残った分の偏りは深まった——そういう並べ方です。今般のホルムズ海峡をめぐる混乱では、原油に加えナフサ等の石油製品にも供給の偏りや目詰まりが生じた、と整理されています。

出典:内閣官房GX実行推進室「エネルギー需給構造の強靱化に向けた我が国GXの加速について(パワーGX)」(令和8年8月26日)第17回GX実行会議 議事次第・配付資料(内閣官房)

② なぜ、これが重要なのか

ガス事業の側から読むと、まず目につくのは「何が心配されているか」のほうです。

調達を扱う柱(1.)に並ぶのは、原油とナフサでした。調達先・輸送経路の多角化、非ホルムズ経路の増強に資する代替パイプラインの建設支援、輸送費用の平準化、そして国家備蓄制度でナフサ利用分を原油の形で確保すること。ナフサは、原油調達のホルムズ依存度が高い国で精製された分も含めると、ホルムズ海峡経由の調達率が現状約5割とされます。海峡を直接通る分だけの数字ではありません。そのナフサがこれまで石油備蓄の対象になっていなかったことが、今回の目詰まりの一因として書かれています。この柱の中心に、LNGはいません。

ガスが登場するのは、別の柱です。「3. AI時代のエネルギー需給の安定化」の「(2) 電力需要の増加を支える電力供給力の確保」に、天然ガス火力等の供給力向上と最大限活用、CCS(二酸化炭素回収貯留)の事業環境整備、タービン供給能力の倍増、送電網・大規模電源の整備が並びます。根拠として、データセンター・半導体工場の新増設に伴い、電力需要が今後10年間で約7GW程度増加すると想定されている、という見立てが置かれています。

もう一か所は「2.(3) 化石代替燃料の供給拡大」。水素・アンモニアのサプライチェーン構築(インフラの活用等)と並んで、バイオ燃料、SAF、合成燃料・合成メタン等の普及支援が挙がっています。

守られる資源としてではなく、電力需要を支える供給力として、そして代替燃料を通す器として書かれた。柱立ての中でガスが正面から出てくるのは、この二か所です。参考ページまで下りれば、代替パイプラインの建設・増強への参画支援が石油と天然ガスの輸送を対象にしていることや、POWERR Asiaのエネルギー源多様化の並びにLNGが入っていることも読めますが、いずれも柱の主語ではありません(エネルギー安全保障の解説章)。

③ だとすると、業界はこう動く

三つ、見ておきたい点があります。

一つめは、「最大限活用」と実際の投資の距離です。 方針としてガス火力の供給力向上が書かれたことと、個々の設備に資金がつくことは別の話です。既設の稼働をどう見るか、新設・リプレースの判断がどの制度で支えられるかは、容量市場や系統の整備計画といった別の場で決まります。方針が出た段階でできるのは、自社と関係先の設備が、どの議論のどの資料に載る立場なのかを把握しておくことくらいですが、それは案外できていません(ガス火力と電力系統の解説)。

二つめは、同じ資料が需要側の電化を進めていることです。 「3.(1) 電化・燃料転換、エネルギー効率向上の抜本強化」には、ものづくり現場のエネルギー需要の革新として電化と効率化投資が挙がっています。産業用の熱需要は、都市ガスの販売量を支えてきた領域です。供給力の欄では数えられ、需要の欄では削られる。ひとつのパッケージの中で、ガス事業は違う向きの力を同時に受けます。どちらが大きいかは資料には書かれておらず、業種別の熱需要の性格によって効き方も変わるはずです。

三つめは、順番です。 パッケージには、GX政策のロードマップ(分野別投資戦略)を見直し、前倒し等の検討を含めて加速・強化する、と明記されています。ただし例示として挙がっているのは次世代型太陽電池や洋上風力で、合成メタンがどの位置に置き直されるかは、この資料の時点では書かれていません。見直しの中身が出てくる場面は、都市ガスにとって今年度後半の焦点になります。

④ 経営として、何を問われるのか

この資料は、GX投資を二つの言葉で説明しています。化石燃料の輸入依存を下げてエネルギー安全保障を支える「危機管理投資」と、電力需要の増大など各国共通の課題を解く技術・製品を展開する「成長投資」です。

そこで、自社の投資計画をこの二語で仕分けてみると、何が起きるか。電力需要の増加で説明がつく案件と、産業の電化によって前提が痩せる案件は、たいてい同じ事業部の同じ資料に、区別されないまま並んでいます。分けて数えられているかどうか。今月そこを一度点検しておくと、ロードマップの見直しが出てきたときに、読む場所が決まります。

まとめ(3行)

  • 8月26日の第17回GX実行会議で「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ(パワーGX)」が取りまとめられた。二つの強靱化は①化石燃料の調達安定性の抜本向上、②GXの加速・強化で、原油輸入の中東依存度は2024年度95.9%と前提に置かれた
  • 調達の柱に並ぶのは原油とナフサ。柱の中でガスが正面から出てくるのは「天然ガス火力等の供給力向上と最大限活用」(電力供給力)と、合成メタン等の「化石代替燃料の供給拡大」の二か所
  • 同じ資料が、ものづくり現場の電化も進める。供給力として数えられ、需要として削られる二つの力を、自社の投資計画の中で分けて把握できているかが問われる
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