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基礎シリーズ 1/3 第1章

都市ガスとは何か

何が燃えて、誰が届けているのか

読了目安 約6分|更新 2026.07.05

毎日あたりまえに使っている都市ガス。でも「中身は何のガスか」「誰がどう届けているのか」と聞かれると、業界の中の人でも意外と言葉に詰まります。この章では、都市ガスの正体をゼロから整理します。

都市ガスの正体は「天然ガス」

都市ガスとは、地下に張り巡らせた導管(パイプライン)を通じて供給されるガスのことです。

現在の日本の都市ガスは、そのほとんどが天然ガスを原料にしています。主成分はメタン(CH₄)。かつては石炭や石油からつくったガスが使われた時代もありましたが、より クリーンで熱量の高い天然ガスへの転換が進み、現在は「13A」と呼ばれる天然ガス系の規格がほぼ全国標準になっています。

天然ガスの特徴は、化石燃料の中では燃焼時のCO₂や大気汚染物質の排出が相対的に少ないこと。「最もクリーンな化石燃料」と呼ばれるゆえんで、これが脱炭素時代の立ち位置(→メタネーションの章)にもつながっていきます。

なお、天然ガスそのものは無色・無臭です。ガス漏れに気づけるよう、わざと「あのにおい」を付けています(付臭)。あの独特のにおいは、保安のための人工的な工夫です。

LPガス(プロパン)との違い

家庭用の燃料ガスにはもう一つ、LPガス(プロパンガス)があります。混同されがちですが、別物です。

  • 都市ガス:主成分メタン。導管で供給。空気より軽い。都市部中心
  • LPガス:主成分プロパン・ブタン。ボンベを配送。空気より重い。導管が届かない地域もカバー

「導管で届くか、ボンベで届くか」が本質的な違いです。導管という巨大インフラを持つことが、都市ガス事業の強みであり、同時に維持コストという宿題でもあります(→料金と自由化の章)。

誰が届けているのか──事業者の全体像

都市ガス事業者は、東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガスといった大手だけではありません。全国に150社を超える事業者があり、その多くは特定の市や地域に根ざした中小の会社です。北は北海道から南は沖縄まで、それぞれの地域の導管網を支えています。

一方で規模の偏りは大きく、**大手4社(東京・大阪・東邦・西部)で国内供給量の大半(約8割とされる)**を占めます。「ごく少数の大手と、多数の地域事業者」という二層構造が、この業界の基本的な地形です。

🔎 全国の事業者は 都市ガス事業者データベース で地域別に検索できます。

何に使われているのか

家庭ではコンロ・給湯・暖房。業務用では飲食店の厨房やビルの空調。産業用では工場のボイラー・炉などの熱源。そして意外に大きいのが発電です。天然ガスを燃やすガス火力発電は日本の電源の主力の一つで、都市ガス会社にとっても電力事業は重要な柱になりつつあります。

「ガス=家庭のコンロ」のイメージよりずっと広く、産業と電力を支える基幹エネルギー——それが天然ガス・都市ガスの実像です。

この章のまとめ

  • 都市ガス=導管で届く天然ガス(主成分メタン、規格13A)。においは保安のための付臭
  • LPガスとの違いは導管かボンベか。導管網は強みであり維持の宿題でもある
  • 事業者は大手4社+150社超の地域事業者の二層構造
  • 用途は家庭・業務・産業・発電まで。産業社会を支える基幹エネルギー

出典・参考:資源エネルギー庁「スペシャルコンテンツ」(enecho.meti.go.jp)/日本ガス協会(gas.or.jp)/各社公表資料。数値の最新値は一次情報をご確認ください。