今週のガスみらい通信は6本。CCSの試掘、LNG在庫、改正電気事業法、大阪ガスの決算、住民基本台帳、長期契約の特集。題材はばらけています。ただ読み返すと、6本とも数字を同じ場所に置いていました。決めた時点と、効く時点のあいだです。今週出てきた長さを拾うと、2か月、3か月、9か月以内、長くて3〜5年程度、そして2030年。どれも「いつまでに決めるか」を、結果が要る日から逆算しないと出てこない数字でした。
今週の3つの動き
① 同じ資料の中を、二つの時間が走っている(8/4 市況・地政学、8/6 他社事例)
JKM(9月受渡)は7月31日に21ドル前半。JOGMECが下落の背景に挙げたものの一つは、北東アジアの十分な在庫でした。ところが7月26日時点の発電用LNG在庫は202万トン、前週比48万トン減。2週間前は242万トン・前週比8万トン増だったので、増減の桁が変わっています。水準は今日の需給に効き、増減はその先に効く。同じ「在庫」という語に、長さの違う二つの情報が入っていました。決算も同じ形です。大阪ガスの第1四半期は経常利益502億円・15.3%減。国内エネルギーのタイムラグ影響が▲218億円ですが、それを除いた経常利益は+127億円の増益でした。原料費調整の反映は3か月後に乗る——つまり含めるか除くかは、どの長さの時間で見るかの選択です。同じ四半期が、減益にも増益にも見えます。→ 在庫の記事/大阪ガスの記事
② 「畳む」「更新する」に、所要時間が書き込まれた(8/5 制度・再編、8/8 特集)
改正電気事業法は7月17日に成立し、施行は一部を除き公布後9か月以内。大規模電源の休廃止には一般送配電事業者等との事前協議が定められ、小売電気事業者の登録取消事由には一定期間の休止等が加わりました。止める判断そのものは以前からありましたが、決めてから動かすまでに要る時間の見積もりが変わります。土曜の特集で掘った長期契約も同じでした。契約交渉期間は短くて数か月、長くて3〜5年程度。スポット調達には通常2か月程度のリードタイムがある。既存契約が2030年以降順次満了するなら、「切れてから考える」という順番はそもそも成立しにくい。→ 電気事業法の記事/長期契約の特集
③ わかるのが遅いものほど、決めるのは早くなる(8/3 脱炭素、8/7 社会情勢)
首都圏CCSの試掘は7月6日に始まり、掘削は来年1月までの予定、貯留開始の目標は2030年代初頭。地層が適しているかどうかは、掘るまでわかりません。それでも回収したCO₂を埋めるのか原料に回すのかは、配管の向きを決めた時点でおおむね決まってしまう。答えが出るより先に、設計の判断が要ります。住民基本台帳の集計も、出るのは年に一度です。人口は56万3,048人減り、世帯は45万9,146世帯増え、1世帯平均は2.00人になりました。件数の母数と一件あたりが逆を向いていることは、この一枚を開かないと1年見えません。→ CCSの記事/世帯数の記事
横串の視点──締切は、結果が要る日ではない
計画の議論は、たいてい「いつまでに何を達成するか」で立てられます。2030年、2040年、次期中計の最終年度。並ぶのは結果が要る日です。
今週の6本が示していたのは、その手前にもう一つ日付があるということでした。決めてから効くまでに、それぞれ固有の時間がかかる。スポットは通常2か月程度、契約交渉は長くて3〜5年程度、料金への反映は3か月、制度の施行は一部を除き公布後9か月以内。この長さは努力では縮まりません。だとすると本当の締切は、結果が要る日から所要時間を引いた日のほうにあります。
厄介なのは、その引き算をした日付がどこにも書かれていない点です。契約満了は資料に載りますが、交渉を始めるべき日は載らない。制度の施行日は公示されますが、社内の棚卸しに要る月数は誰も計算していない。エネルギー安全保障の解説章で扱う「量の確保」も、料金と市場の解説章で扱う転嫁の仕組みも、突き詰めれば量や率の話であると同時に、間に合うかどうかの話です。遅れて効くものは、遅れる分だけ先に決めるしかない。
来週への問い
自社の計画表にある期限のうち、逆算した着手日まで書いてあるものはいくつありますか。
期限は共有されます。誰もが知っていて、資料の見出しにもなる。一方、そこから所要時間を引いた日は、たいてい担当者の頭の中にしかありません。試しに、直近の重要な期限を三つ挙げて、その横に「では、いつ決めるのか」を書き足してみる。すでに過ぎている日付が出てきたら、それは遅れているのではなく、まだ気づいていなかっただけかもしれません。来週も、数字の大きさより、効くまでの長さのほうを見ていきます。
まとめ(3行)
- 今週は6本。CCS、LNG在庫、改正電気事業法、大阪ガス決算、世帯数、長期契約の特集と題材はばらけたが、いずれも「決めた時点」と「効く時点」のあいだにある時間の話だった
- 出てきた長さは、スポット調達が通常2か月程度、原料費調整3か月、制度施行は一部を除き公布後9か月以内、契約交渉は長くて3〜5年程度、契約満了は2030年以降順次。この所要時間は努力では縮まらない
- だとすると締切は、結果が要る日ではなく、そこから所要時間を引いた日にある。その日付は資料のどこにも書かれていないので、自分で引き算するしかない