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読み解き 脱炭素 地図:制度・政策 2026年9月28日(月) 6:00

取引所より先に、義務が来た

GX-ETS第2フェーズ。市場も枠もない今年度から義務は始まっている

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「排出量取引制度」と聞くと、まだ先の準備段階の話に聞こえるかもしれません。ですが、この制度の法的な義務化そのものは、すでに今年度から始まっています。会社が出すCO2に値札がつく、その仕組みの話です。

① いま、何が起きているのか

GX-ETS(排出量取引制度)は、2026年度から第2フェーズに入り、対象企業の参加が義務化されています。対象になるのは、CO2の直接排出量が前年度までの3カ年度平均で年10万トン以上になる事業者で、その数は300〜400社程度、日本の温室効果ガス排出量の6割近くをカバーする見込みです。

義務の中身は大きく二つです。一つは排出枠の遵守——毎年度の排出実績と同量の排出枠を、翌年度の1月31日に保有すること。もう一つは第三者確認——国が認めた登録確認機関による確認を受けることです。確認の水準は最初の3年間は限定的なものにとどまり、2029年度以降は大規模事業所(年間CO2排出量100万トン以上が目安)を対象に、段階的に厳しい水準へ移行する設計になっています。枠の保有義務を果たせなかった分には、上限価格の1.1倍を支払う仕組みが用意されています。

出典:デロイト トーマツ グループ「排出量取引制度(GX-ETS)」制度解説(2026年1月26日執筆)

ここで押さえておきたいのは、義務化の開始日と、制度が実際に動き出す日がずれていることです。企業が排出枠を初めて割り当てられるのは2027年度で、今年度(2026年度)の分は、2027年度にその年の分とあわせて2年分が割り当てられます。余った枠・足りない枠を売買する取引市場が開くのも、2027年度の秋ごろの予定です。

義務が先、枠と市場はあと
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<text x="28" y="56" font-size="12.5" font-weight="700" fill="#0c1b33">2026年度〜 義務化スタート</text>
<text x="28" y="75" font-size="12" fill="#4a5570">対象:3年平均で年10万トン以上、300〜400社程度</text>
<text x="28" y="90" font-size="12" fill="#4a5570">カバー率は6割近く。今年度分の枠は2027年度に割当</text>

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<text x="28" y="148" font-size="12.5" font-weight="700" fill="#0c1b33">2027年度 初回の排出枠を割当</text>
<text x="28" y="167" font-size="12" fill="#4a5570">実績と同量の枠を、翌年度の1月31日に保有する義務</text>

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<text x="28" y="234" font-size="12.5" font-weight="700" fill="#0c1b33">2027年秋ごろ 取引市場を開設</text>
<text x="28" y="253" font-size="12" fill="#4a5570">枠の過不足を売買できる場が、ここで初めてできる</text>

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<text x="210" y="304" font-size="12" font-weight="700" fill="#f5a83e" text-anchor="middle">未達分は上限価格の1.1倍を支払う</text>
<text x="210" y="320" font-size="12" fill="#c9d4e6" text-anchor="middle">2029年度以降は大規模事業所で確認が厳格化</text>
図:GX-ETS第2フェーズの義務化から市場開設までの時系列(出典:デロイト トーマツ グループ制度解説)

② なぜ、これが重要なのか

普通、制度は「市場や仕組みができてから、参加が義務になる」という順番で語られます。GX-ETSはこの順番が逆です。枠の割当も市場もまだ無いのに、対象企業は今年度からすでに制度の対象になっていて、今年度の排出実績が確認と枠の保有の対象になります。

GXとカーボンプライシングの解説章で触れたとおり、この制度は「先に投資支援、後から値付け」という時間差の設計で進んできました。今回の義務化は、その「値付け」の入り口が、市場という具体的な形になる前に始まったことを意味します。対象企業にとっては、枠も市場もない期間に、値段がつく前提で排出量のデータを整えていく状態です。

③ だとすると、業界はこう動く

まず動くのは、対象企業とその周辺の実務です。3年平均で年10万トン以上という基準は、都市ガス事業者自身の設備だけでなく、ガスを大量に使う工場や発電設備を持つ大口顧客にも当てはまりうるものです。第三者確認の水準は当面は限定的とはいえ、確認を受けられる体制と排出量の算定精度を、この空白期間のうちに整えておく必要があります。

次に動くのが、料金と原料費の議論です。料金と自由化のしくみの解説章で扱ったとおり、原料費調整の枠組みは既にあります。排出枠のコストが顕在化するのは市場開設後になりますが、そのコストをどこでどう吸収するかという制度設計の議論は、市場が開く前から進みます。ニュースで「対象拡大」「価格水準」「上限価格」の議論が出たら、それはこの空白期間のうちに条件が固まりつつあるという合図です。

最後に、大口顧客側の動きです。排出量取引の対象になる工場や施設ほど、燃料のCO2がコストに直結します。石炭・石油からガスへの燃料転換や、より少ない熱量で同じ生産を続ける工夫への関心は、市場が実際に開く前から強まっていくと考えられます。営業や需給の現場では、その関心の芽が、市場開設前のこの時期にすでに顧客の会話に出てくる可能性があります。

④ 自分の仕事では、どう考えるか

もし自分の会社、あるいは取引先が3年平均で年10万トンに近い排出量を持っているなら、それはもう「これから始まる制度」ではなく「もう義務が始まっている制度」の対象です。環境・経営企画の担当者だけの話ではありません。営業なら、対象になりそうな大口顧客がどこか、供給・需給の担当なら、自社の設備の排出量がどの水準にあるか、いま社内で誰が把握しているでしょうか。

枠の割当と市場が動き出すのは2027年度からですが、今年度の排出実績はすでに制度の対象です。算定の仕組みと社内のデータ体制は、今年度のうちに固まっていきます。この空白期間の問いは、「まだ市場がないから急がなくていい」なのか「もう義務は始まっているから今から備える」なのか——自分の仕事はどちらの前提で組まれているか、ということです。自分の担当領域について、誰かに聞かれたら今すぐ答えられるでしょうか。

まとめ(3行)

  • GX-ETS第2フェーズは2026年度から義務化。対象は3年平均で年10万トン以上排出する企業300〜400社程度で、排出量の6割近くをカバーする見込み
  • 排出枠の保有(翌年度の1月31日)と第三者確認が義務。未達分は上限価格の1.1倍を支払う。確認水準は当初3年間は限定的、2029年度以降は大規模事業所を対象に厳格化
  • ただし初回の排出枠割当は2027年度、売買市場の開設は2027年秋ごろの予定。義務化が先、枠と市場はあとという順番になっている

この記事の一次資料(1)

  1. デロイト トーマツ グループ「排出量取引制度(GX-ETS)」制度解説(2026年1月26日執筆)

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