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読み解き 制度・再編 地図:導管・託送 2026年10月14日(水) 6:00

値上げは、物価に追いつけるか

テーマ 託送料金

託送料金に物価連動を導入、経過措置は大手3社で解除完了

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2017年の都市ガス小売全面自由化から、およそ10年。資源エネルギー庁が10月9日、この10年の制度を検証した報告書をまとめ、託送料金の決め方を変えることを打ち出しました。ガスを家まで届ける導管の、料金の決め方の話です。

① いま、何が起きているのか

資源エネルギー庁は2026年10月9日、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会のガス事業環境整備ワーキンググループに、「ガスシステム改革の検証結果と今後の方向性」をまとめた資料を提出しました。2015年の改正法附則に基づき法定されている事後検証のうち、2022年の導管部門法的分離後の状況についての検証にあたります。

出典:資源エネルギー庁「ガスシステム改革の検証結果と今後の方向性」(2026年10月、ガス事業環境整備ワーキンググループ)

この中で、料金に関わる変更が2つ示されています。

1つ目は、小売料金の「経過措置」規制です。小売全面自由化の際、競争が十分でない地域の事業者には当分の間、料金規制を残す経過措置が設けられましたが、2026年10月時点で、対象だった12社のうち規制が残るのは3社のみとなり、東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社のエリアはすべて解除が完了しました。

2つ目は、導管を使う際の通行料にあたる託送料金の原価算定方法です。これまでは値上げのたびに過去の実績費用で原価を洗い替えていましたが、今後は消費者物価指数などを使った「変動見込み(エスカレーション)」をあらかじめ原価に算入できるようになります。労務費には賃金構造基本統計調査、修繕費など工事費には建設工事費デフレーターを使い、直近5年のうち変動率が最大・最小の年を除いた3年間の平均値を指標とします。あわせて、特定費目だけを機動的に改定する「変分改定」の対象に水道料・占用料を追加し、審査にかかる標準処理期間も4か月から2か月に短縮します。これらは2026年度中をめどに省令改正等で実施される予定です。

経過措置料金規制、12社のいま(2026年10月時点) 解除済み 9社 東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社を含む 大手3社エリアはすべて解除が完了 規制が残る 3社 12社から9社が抜けた残り 小売の規制は、ほぼ解除局面に入った
図:経過措置料金規制の解除状況(出典:資源エネルギー庁「ガスシステム改革の検証結果と今後の方向性」)

② なぜ、これが重要なのか

託送料金は、導管という「自然独占」のインフラを使う以上、競争による値下げ圧力が働きません。そのため総括原価方式という、かかった費用を積み上げて料金を決める規制が採用されています。ただし、値上げには認可申請の手続きが必要で、一斉に料金を決め直す「洗い替え」の時点までは、過去のデータに基づく料金が据え置かれます。その間に人件費や資材費が上がっても、料金にはすぐに反映されません。託送のしくみの解説章にある通り、導管の維持には継続的な設備投資が欠かせず、このタイムラグは事業者にとって重い課題でした。

今回の見直しは、将来の物価上昇の「見込み」を先に原価へ組み込めるようにするものです。コストが上がってから料金が追いつくまでの遅れを縮める狙いがあります。一方で、小売料金の経過措置規制はほぼ解除が完了し、監視等委員会による特別な事後監視も今後終わっていく局面です。つまり、料金をめぐる制度の焦点が、「小売の規制」から「託送の規制のあり方」へと移ってきている、と読めます。

③ だとすると、業界はこう動く

一つめは、託送料金の値上げ理由の説明が変わることです。 これまでの「過去の実績費用がこれだけ増えました」という説明に加えて、「今後の物価上昇見込みをこれだけ織り込みました」という説明が加わります。消費者物価指数は他の指標より緩やかに推移するものが基本指標に選ばれており、過大な値上げにならないよう事後の確認も行われる設計です。

二つめは、個別の費目ごとの改定(変分改定)がこれまでより速く動くようになることです。 標準処理期間が4か月から2か月に短縮され、対象にも水道料・占用料が加わりました。導管事業者の経営努力だけでは吸収できない外生的な要因による費用変動を、料金により迅速に反映しやすくなります。

三つめは、小売側では「規制で守られた料金」という前提がほぼなくなることです。 大手3社を含めほとんどの事業者で経過措置が解除され、今後は一般的な市場監視の枠組みの中で料金の妥当性が見られていきます。

④ 自分の仕事では、どう考えるか

託送料金や導管の予算・原価に関わる仕事をしているなら、エスカレーションの対象指標(消費者物価指数・賃金構造基本統計調査・建設工事費デフレーター)が、自分の担当する費目にどう当てはまるのか、来年度の料金改定の説明にどう使われるのか、一度確認してみる価値があります。

営業や料金のお客さま対応に関わる仕事をしているなら、小売料金の「規制で守られていた時代」が実質的に終わったことを前提に、値上げの説明の仕方が変わってきていないか——その問いを、一度自分の業務に当てはめて考えてみませんか。

まとめ(3行)

  • 資源エネルギー庁が10月9日、ガスシステム改革10年の検証結果をまとめ、託送料金の原価算定に物価・人件費の変動見込み(エスカレーション)を新たに算入することを決めた
  • 経過措置料金規制は、対象だった12社のうち9社が解除済みで、東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社エリアはすべて解除が完了している
  • 変分改定の標準処理期間も4か月から2か月に短縮され、2026年度中をめどに省令改正等が実施される予定

この記事の一次資料(1)

  1. 資源エネルギー庁「ガスシステム改革の検証結果と今後の方向性」(2026年10月、ガス事業環境整備ワーキンググループ)

記事の数字・範囲を限る言葉・増減の向き・因果は、公開前に別のAIがこれらの資料の原文と照合しています(編集と検証のしかた)。正確な判断が必要なときは、原文をご確認ください。

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