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読み解き 市況・地政学 地図:調達・製造 2026年10月27日(火) 6:00

アジアも欧州も上昇、米国だけ下落したガス価格

JOGMEC週次レポートで読む、世界のガス価格の分岐

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同じ1週間なのに、天然ガスの値段は世界で逆方向に動きました。JOGMECの週次レポートによると、中東の供給不安と欧州の冷え込み予報でアジア・欧州のガス価格は上がり、暖冬予報の米国だけ下がっています。LNGの値段がどう動くかという、調達の話です。

① いま、何が起きているのか

JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が2026年10月26日に公表した「天然ガス・LNG週次価格動向」(対象期間:10月19日〜23日の週)によると、3つの指標が異なる方向に動きました。

JKM(北東アジア向けスポットLNG、12月受渡)は、前週末10月16日の29ドル台後半から、10月23日には31ドル台後半まで上昇。中東情勢を巡る供給不安や、欧州の冬が例年より冷え込むとの予報から供給逼迫懸念が高まったほか、中国・韓国・インドによる期近需要の増加が押し上げ要因です。ただし北東アジアの需要家による冬季向けスポット調達は一服したとも指摘されています。

TTF(欧州ガス、11月限月)も28.9ドルから30.8ドルへ上昇。ノルウェーのTrollガス田・Åsgardガス田での供給支障と、欧州各地の気温低下予報、中東情勢の緊迫化が要因です。週の前半には中東戦争終結に向けた仲介の動きが報じられ、利益確定売りで一時下落する場面もありました。EU全体の地下ガス貯蔵率は74.6%(前週末74.3%から上昇)ですが、貯蔵量は前年同時期比10.6%減、過去5年平均比16.6%減とされています。

HH(米国ガス、11月限月)は逆に、3.1ドルから2.6ドルへ約15%下落。米国の広範囲で平年を上回る気温が予想され、暖房需要の低迷が見込まれたためです。米エネルギー情報局(EIA)発表の米ガス在庫(10月16日時点)は3,644Bcfで、前週比77Bcf増でした。

日本の発電用LNG在庫(10月18日時点)は254万トンで、前週比10万トン減となっています。

出典:JOGMEC「天然ガス・LNG週次価格動向」(2026年10月26日)

天然ガス3指標(10/16→10/23) JKM(アジア) 29ドル台後半→31ドル台後半 ▲ 上昇 TTF(欧州) 28.9ドル→30.8ドル ▲ 上昇 ヘンリーハブ(米国) 3.1ドル→2.6ドル ▼ 下落 供給不安・寒波予報で上昇、暖冬予報の米国だけ下落
図:天然ガス3指標の方向(出典:JOGMEC「天然ガス・LNG週次価格動向」2026年10月26日)

② なぜ、これが重要なのか

日本の都市ガス会社が輸入するLNGの多くは長期契約ですが、スポット調達や価格再交渉の場面では、JKMの動きが最終的な調達コストに跳ね返ります。LNG市場の解説章が説明するとおり、LNGの価格は原油価格に連動する契約だけでなく、スポット市況を参照する取引も増えており、国際指標の動きは無関係ではいられません。

今回の3指標の分岐が示すのは、価格を動かす要因が地域ごとに違うという構造です。アジア・欧州は中東情勢やノルウェーの供給支障といった地政学・供給リスクに晒され、米国は国内の気温予想という需要側の要因で動きました。エネルギー安全保障の解説章が指摘するように、供給源を複数国・複数経路に分散していても、地政学リスクそのものを打ち消すことはできません。価格が「世界で一つの値段」ではなく、地域ごとの事情で動くという前提を、改めて確認させる1週間でした。

③ だとすると、業界はこう動く

冬本番に向けて中東の供給不安や欧州の寒波予報が続けば、JKM・TTFはさらに上振れするリスクがあります。一方で、北東アジアの需要家による冬季向けスポット調達が一服したという指摘は、需要家側が高値での追加調達を急がず様子を見始めている兆しとも読めます。

日本の発電用LNG在庫が前週比10万トン減っている局面は、冬の需要期に向けて在庫を使い始めているタイミングと、スポット価格が上がっているタイミングが重なっていることを意味します。追加調達が必要になったとき、どのタイミングで・どの価格帯で動くかの判断は、例年より難しくなる可能性があります。また、中東戦争終結に向けた仲介報道一つでTTFが一時下落した事実は、地政学ニュースに市場がどれだけ敏感かを示しています。

④ 自分の仕事では、どう考えるか

調達や需給管理に関わる仕事なら、今週のJKM・TTFの上昇とスポット調達の一服という2つの情報を、自社の冬季追加調達の判断材料としてどう使うか確認してみてください。料金や原料費調整に関わる仕事なら、国際市況の上昇が最終的にどの仕組みを通じて料金に反映されるのか、自分の言葉で説明できるか試してみる機会です。直接の担当でなくても、「LNG価格が上がった」という報道を見たとき、それがアジアなのか欧州なのか米国なのか、地域を区別して受け止められるかどうか——この問いに、自分なりの答えを持てているでしょうか。

まとめ(3行)

  • JOGMECの週次レポートによると、10月16日→23日でアジアのJKMは29ドル台後半→31ドル台後半、欧州TTFも28.9→30.8ドルへ上昇
  • 要因は中東の供給不安・欧州の寒波予報・アジアの期近需要増。一方、米国ヘンリーハブは暖冬予報で3.1→2.6ドルへ約15%下落した
  • 日本の発電用LNG在庫は254万トン(前週比10万トン減)。価格上昇と在庫減が重なる局面で、冬季の追加調達判断は難しさを増す

この記事の一次資料(1)

  1. JOGMEC「天然ガス・LNG週次価格動向」(2026年10月26日)

記事の数字・範囲を限る言葉・増減の向き・因果は、公開前に別のAIがこれらの資料の原文と照合しています(編集と検証のしかた)。正確な判断が必要なときは、原文をご確認ください。

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