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読み解き 社会情勢 地図:電力・新事業 2026年11月6日(金) 6:00

蓄電池が動かされても、得した実感がないのはなぜか

容量市場に向け、各社が挑む『納得感』という課題

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家庭の蓄電池が、電力会社の指示で勝手に充放電する。技術的にはもう珍しくありません。それでも利用者は、なぜか得した実感を持てずにいます。東京ガスが11月に蓄電池サービスを拡充した狙いは、まさにこの「実感のなさ」の解消でした。電気を売り買いする仕組みの外側、電力・新事業の話です。

① いま、何が起きているのか

東京ガスは2026年11月、家庭用蓄電池向けの「蓄電池ネットワークサービス」を拡充しました。蓄電池を遠隔で制御した際の対価を、制御の目的ごとに分けて明確にしたのが今回の変更点です。容量市場の発動指令など当日の需給に応じて制御した場合は1kWhあたり70円(太陽光発電の買取単価を含む・上限額)、電力市場価格の予測に基づいて前日に制御した場合は「電力量料金単価+10円/kWh」(2026年11月時点の実例で48.35円/kWh)を支払う仕組みです。対象はオムロンソーシアルソリューションズ・京セラ・長州産業の蓄電池で、東京ガスとの電気契約と太陽光発電の電力受給契約が条件になります。加えて、制御の予定・履行履歴を確認できる専用マイページも用意されました。背景には、2025年12月に200台超の家庭用蓄電池を使って容量市場の発動指令への遠隔制御の実効性テストを実施した経緯があり、2027年4月から始まる予定の容量市場への供給力提供に向けた準備という位置づけです。出典:東京ガス「蓄電池ネットワークサービスの拡充について」

家庭用蓄電池の容量市場参加への道筋 ①2025年12月 実効性テスト 200台超の家庭用蓄電池を遠隔制御 ②2026年11月 サービス拡充 当日制御70円/kWh・前日制御+10円/kWh ③2027年4月 供給力提供開始(予定) 容量市場に家庭の蓄電池を組み込む 技術の準備は進んだ。残る課題は利用者の納得感
図:家庭用蓄電池の容量市場参加への道筋(出典:東京ガス「蓄電池ネットワークサービスの拡充について」)

② なぜ、これが重要なのか

再生可能エネルギーが増えるほど、天候による出力変動や需給のひっ迫への対応が必要になります。これまでその調整役は大型の発電所や蓄電設備が担ってきましたが、各家庭に散らばる蓄電池を束ねて「小さな発電所の集まり」として使う発想(VPP・バーチャルパワープラント)が本格化しつつあります。2027年4月から、こうした家庭用蓄電池が容量市場で供給力として扱われる計画が進んでおり、個人の資産が電力システムの一部に組み込まれる転換点になります。ガスと電力網の解説章が示すように、電力の安定供給は発電量だけでなく、需要側をどう動かすかにも左右される時代に入っています。ただ、東京ガスが利用者調査で見つけた課題は技術面ではありませんでした。遠隔で制御されても経済的なメリットを実感しにくいこと、電気代や蓄電残量がどうなるか分からない不安があることが、普及の壁になっていたのです。

③ だとすると、業界はこう動く

同じ課題は、VPP・DR(デマンドレスポンス)サービスを展開する電力・ガス各社に共通するはずです。遠隔制御そのものの技術はすでに確立されつつある一方、利用者が「納得して参加できる」ための仕組み——対価を見える形で示す・履行実績を確認できる・不安な点を事前に説明する——への投資が、今後の競争軸になっていくと考えられます。家庭用蓄電池やEVを束ねて供給力にする構想は、今回の東京ガスの事例に限らず各社で検討が進んでおり、個人の設備を電力システムに組み込む仕組みが広がるほど、「動かす側」と「動かされる側」の信頼をどう築くかが問われます。総合エネルギー化の解説章が触れているとおり、ガス会社にとっても電力の需給調整は、料金収入に次ぐ事業の柱になりつつあります。

④ 自分の仕事では、どう考えるか

営業や企画、カスタマーサポートに携わっているなら、「遠隔で機器が制御される」という仕組みを、利用者の不安を増やさずに説明できるか、一度考えてみる価値があります。経済メリットや制御履行の実績を、今の自分の商品やサービスで「見える形」にできているでしょうか。需給調整やDR・VPP関連の業務に近いなら、技術的な実証が済んだ後も利用者側の納得感という壁が残ること——この問いを一度、自分の担当する仕組みに向けてみませんか。

まとめ

東京ガスは11月、家庭用蓄電池の遠隔制御への対価を制御目的ごとに明確化し、専用マイページで履行実績を確認できるようにしました。背景には、2027年4月に始まる予定の容量市場への家庭用蓄電池の参加があります。そこで見えてきた壁は技術ではなく、「経済メリットが見えない」という利用者の納得感でした。

※ 筆者は都市ガス事業者に勤務しています。本記事は公表情報のみに基づく個人の見解です。

この記事の一次資料(1)

  1. 東京ガス「蓄電池ネットワークサービスの拡充について」

記事の数字・範囲を限る言葉・増減の向き・因果は、公開前に別のAIがこれらの資料の原文と照合しています(編集と検証のしかた)。正確な判断が必要なときは、原文をご確認ください。

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