トップ / 読み解き / 社会情勢
読み解き 社会情勢 地図:電力・新事業 2026年10月23日(金) 6:00

送電線が追いつかず、データセンターが自前で発電する

AIの電力需要9倍増と、電源併設型データセンターという発想

約6分 実務 出典2件・自動照合
LISTENこの記事を聴く(約7分)

音声はMicrosoft Azureの合成音声です。出典と図解は下の記事でご覧ください。Spotifyで聴く・フォロー ↗

AIの普及で、データセンターの電力需要が急激に膨らんでいます。送電線の整備がそのスピードに追いつかず、データセンター自身が発電設備を持つ「電源併設型」という発想が動き始めました。ガス管の外へ、仕事の種を広げる電力・新事業の話です。

① いま、何が起きているのか

日立製作所・Brookfield Japan・Hartree Partners Singaporeの3社は2025年7月から、電源を併設したグリーンデータセンターの基本構想と標準モデルの開発に取り組んでいます。この協業に、都市ガス事業者の東京ガスが2026年9月30日付の覚書で新たに参加し、2026年10月19日に発表されました。

出典:東京ガス「AI需要を支える電源併設型グリーンデータセンター実現に向けた協業開始」(2026年10月19日)

電源併設型グリーンデータセンターとは、データセンター自身が発電設備を持ち、系統電力への依存を抑えながら安定的にエネルギーを使う施設です。4社は関東地方と九州地方の2件を初号プロジェクトとし、敷地内発電を基幹電源に蓄電池・系統電力を組み合わせる供給モデルや、設備のパッケージ化・モジュール化による展開の標準化を目指すとしています。具体的な建設地や着工時期はまだ発表されていません。

② なぜ、これが重要なのか

この協業の背景には、データセンターの電力需要がすでに送電網の整備速度を超えて膨らんでいる現実があります。東京電力ホールディングスの推計によると、データセンターの最大電力は2026年度の83万kWから2035年度には762万kWへ、10年で約9倍に拡大する見込みです。東京電力エリアではすでに約1500万kW(15GW)分の系統接続枠がデータセンター向けに確保されており、仮に稼働率60%で動けば年間約790億kWhとなり、東京都全体の年間電力消費量(約770億kWh、2024年度)に匹敵する規模になるといいます。

出典:ITmedia ビジネスオンライン「データセンター増設ラッシュで『東京1つ分の電力』が必要に 間に合わぬインフラ整備、東電の“奇策”は」(2026年9月17日、東京電力ホールディングスによる講演内容を基にした報道)

AIの普及でDC建設が加速 都市圏中心に電力需要も急増 最大電力は10年で約9倍に 2026年度83万kW→2035年度762万kW 系統接続枠は先行確保済み 東京電力管内で約1500万kW(15GW) 系統整備が需要増に追いつかず 電源確保までの期間が長期化 電源併設型DCという対応 日立・Brookfield・Hartreeに新たに1社参加(10/19) 系統電力への依存を抑えた新モデル 関東・九州で初号プロジェクトを計画
図:データセンターの電力需要急増から電源併設型DCへの流れ(出典:企業発表・ITmedia報道)

系統接続の申請から実際に電力を使えるようになるまでには、送電線やその先の発電所の整備が必要で、長い年月がかかります。AIの進化とデータセンターの建設計画がそのスピードを上回ってしまい、「系統を待てない」事業者が増えていることが、電源併設型という発想が注目される理由です。

③ だとすると、業界はこう動く

一つめは、データセンター向け電源が、電力会社だけの仕事ではなくなることです。 今回のように、発電設備の設計・開発・運用の実績を持つ企業が、電力会社を介さずにデータセンター事業者と直接組む動きが広がる可能性があります。

二つめは、「どこに作るか」という立地の条件が変わることです。 系統に余力がある場所を探すだけでなく、発電設備を自前で持てるなら、系統の制約そのものを避けて立地できる選択肢が広がります。データセンターの地方分散を促す政府の方針とも、方向性は重なります。

三つめは、標準化・モジュール化という言葉が示す通り、個別プロジェクトごとの一点物ではなく、同じ型を各地に展開する発想が前提になっていることです。 4社が今回目指すのは基本構想と標準モデルの開発であり、関東・九州の初号プロジェクトはその型を確かめる位置づけに見えます。

④ 自分の仕事では、どう考えるか

電力・新事業や需給管理に関わる立場なら、自社が持つ発電・コージェネレーションの技術やノウハウが、データセンターという新しい需要先にそのまま使えるものかどうか、一度棚上げせずに考える価値があります。営業や企画に関わる立場なら、取引先や地域の企業からデータセンター関連の相談が来たとき、自社のどの部署が窓口になるか、答えられるでしょうか。

保安や導管に関わる立場でも無縁ではありません。発電設備を併設した施設が増えれば、点検・保安の対象そのものが広がっていきます。自分の担当業務の中に、いつかデータセンターという言葉が出てくる日が来るか——答えを急がず、まず問いとして持っておきたいところです。

まとめ(3行)

日立・Brookfield・Hartreeによる電源併設型グリーンデータセンターの協業に、都市ガス事業者が新たに参加したと、2026年10月19日に発表されました。 背景には、データセンターの最大電力が2026年度の83万kWから2035年度の762万kWへ、10年で約9倍に拡大するとの見通しがあります。 系統整備が需要増に追いつかない中、系統電力への依存を抑える発電のあり方が、電力会社以外の企業にも広がる仕事になっています。

データセンターと電力需要の関係は、総合エネルギー化の解説章でも扱っています。

※ 筆者は都市ガス事業者に勤務しています。本記事は公表情報のみに基づく個人の見解です。

この記事の一次資料(2)

  1. 東京ガス「AI需要を支える電源併設型グリーンデータセンター実現に向けた協業開始」(2026年10月19日)
  2. ITmedia ビジネスオンライン「データセンター増設ラッシュで『東京1つ分の電力』が必要に 間に合わぬインフラ整備、東電の“奇策”は」(2026年9月17日、東京電力ホールディングスによる講演内容を基にした報道)

記事の数字・範囲を限る言葉・増減の向き・因果は、公開前に別のAIがこれらの資料の原文と照合しています(編集と検証のしかた)。正確な判断が必要なときは、原文をご確認ください。

VOICE

あなたの声を聞かせてください

1タップで答えられます。集計はその場で見られます。

この話、あなたの仕事との距離は?

データセンターの電力需要の高まり、自分の仕事に関係がありそうですか?

回答は匿名で集計します。寄せられた声は、記事と解説づくりに使います。取り扱いについて

体系で理解する ─ 業界のしくみ
CH5 この記事の背景は、解説シリーズ第5章で体系的に学べます。 第5章 誰がどれだけ使うのか 基礎シリーズ|約6分 この章を読む →